欧米文学、ジャズ、映画の評論家として知られた"JJ”こと植草甚一さん(1908~1979)は膨大なエッセイや日記と4000枚を超えるジャズレコードのコレクションを残しました。ジャズレコードはタモリさんに引き取られたといいます。
タモリさんと植草氏に個人的面識はなかったが、遺品整理をまかされたのが、両人をよく知る放送作家の高平哲郎氏。安く売ってバラバラにしてしまうのも忍びないし、遺族のためにも、と、「植草さんのコレクションだから、間違いないから買わないか?」とタモリさんに連絡。タモリさんもそのコレクションの内容を詳しく聞かずに、納得して買い取ったといわれている。
コレクションは見ることはできませんが、彼の世界観はエッセイなどからたどることができます。今でも色あせることのない好奇心を感じさせられます。
「スイングとジャズの生命」
モダン・ジャズの特色は、演奏されているとき、その根底に、きいている人たちの気持ちをゆったりとリラックスさせるものが流れていることです。
ジャズを演奏する人たちは気持ちがくつろぐことを<リラックス>すると普通言っていますが、リラックスしながらも気持ちはうきうきとはずんでくるでしょう。
よく<スイングするね>といいますが、これもジャズの分野での特別な言いかたであって。スイングするからこそ、きいているほうでも気持ちが興奮していくわけです。
下手くそな演奏をきいていると、リラックスさせてもくれないし、興奮もさせてくれないでしょう。それはスイングのしかたが足りないからです。つまりスイングすることがジャズの生命だということになります。
*「いつも夢中になったり飽きてしまったり」(筑摩書房)
リラックスさせながらスイングする。気持ちをうきうきさせるような曲を聴くと本当にそんな気持ちになります。植草さんはそんな感じを<シビれちゃう>といっています。