テレビの仕事に就く前までは、オーディオにはまっていた時期がありました。当時は秋葉原あたりに行くと、オーディオの店が隆盛を誇り、型落ちのアンプやらを3割引で手に入れるのも楽しみの一つでした。同僚のオーディオマニアにそそのかされ、かなり業界の発展に寄与したものと思い返します。
テレビの仕事を始めると、プロ級の機器に日常的に接することになります。すると、オーディオファン時代には雲の上にあったマイクや録音・再生機はてはミキシング機器などが手に届くところにころがっているので使い放題です。実演家とのつきあいやライブ収録、資料用の音源(レコードやCDのことです)はたまた、音声技術や音響効果のプロフェッショナルも身近なあるものですから、マニアの見習いとしては宝の山に迷い込んだ気持ちに・・・最初はなりました。
しかしですね。人間は「慣れる」のです。その環境に。そして、いろいろと情報を手に入れるのです。
その結果なにが起きたかというと、オーディオ機器に対する情熱がきれいさっぱり消え去ったのです。JBLやアキュフェーズ、タンノイなんてブランドが売り出すウン百万円の機械を見ても物欲がわかなくなりました。
なぜかというと、オーディオ評論家が熱く語る高額な機械が醸し出す「音の違い」なんて、絶対音感を持たない一般ピープルには無意味であることがなんとなくわかってしまったのです。人に聴かせてお金をとるならいざしらず、個人で機械をそろえて自宅をスタジオに変えるなんて野望もきれいさっぱりなくなりました。
今関心があるのは、ハイレゾ音源かそうでないかの違いだけ、CD音源でも192KHZのFLACファイルで録れていればそれで良しというアバウトさです。
人間、ある程度年を取るとある音域が聞こえなくなりますから、機器にいくらカネをつぎ込んでも猫に小判なのです。
楽しみなのは、いろいろなCDを聴く中から、自分の琴線に触れる演奏や実演家との出会いに興味の向きが変わってきました。番組制作は「人から始まり人に終わる」と先達から聴かされてきましたが、音楽も人なんだろうと思います。機械ではなくってね。
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