名手とトリオのめくるめく即興演奏
1979年生まれ。米音大在学中にジャズの名門レーベル、手ラークと契約。2003年デビュー。2011年グラミー賞。アンソニー・ジャクソン(ベース)、サイモン・フィリップス(ドラム)とトリオを組み、足かけ5年にわたって世界をツアーしてきた。2016年2月にはすべて上原のオリジナル曲で構成されたトリオ4作目となる「SPARK」を発表する。
圧倒的なパワーで迫る上原のピアノに、フィリップスはすさまじい手数のドラムで応酬。ジャクソンのベースが音の嵐を受け止めながら、さらに意外な展開へと導く。めくるめく即興演奏の応酬がこのトリオの特徴です。上原は静岡での少女時代、「彼らのCDにあわせて勝手にセッションしたりしていた」といいます。
「鼻歌を歌うようにして浮かんだ曲の断片を書きためています。それらをパズルのように組み合わせるのが私の作曲法。曲に仕上げるときはキーワードを書き出し、ひこを突破口にします。衝撃、心躍る、そんな言葉から本作が生まれました」
「即興演奏がどんどんわいて出てくるとき、頭の中で何も考えていないわけではありません。むしろものすごく考えているのです。考えていることすらわからなくなる。トランス状態になっている自分を見ているもう一人の自分がいる。いわば冷静さとアドレナリン全開の完全なる均衡。そんな状態の時がある。完全にブワーッと行ってしまってはだめで、冷静すぎてもだめなんです」
好きなジャズピアニストとして、アーマッド・ジャマルやエロール・ガーナーの名をあげる。
「ベースとドラムを交えたトリオで演奏すると、多くのピアニストは88鍵の右半分(高音域)ばかり弾く傾向があるのに二人はすべて使う。ピアノがオーケストラのように鳴るのです。そらにピアノの音同士が遊んで、いたずらし合い、会話しているように聞こえるのがいいんですよね」
現在はニューヨークと東京に住まいを構える。休日は「ゆっくり曲作りをしたり、練習をしたり。結局ピアノに向かっています。好きなので」 「今は旅先での乾燥や気温差を意識し体調管理を大切にしています。『体調管理』なんて言葉が出てくるようになってのが大人になった印でしょうか」